トップページへ
スリランカ点描(1)
 首都コロンボから車で数時間、中部山岳地帯の町バドゥッラの幹線道路を離れて7〜8キロ。アップダウンの激しい悪路を、時速10キロ!で行くこと40分の山の中腹にアジトゥ君の一家、ご両親とお母さん、子ども3人が住んでいます。
 国際NGOのフォスタープラン、バドゥッラ事務所による地域の環境整備のプロジェクトが終わって、住所がわからなくなっていたこのご家族にもう一度会いたいと、モットゥネ・アンギラサ師にお願いして、8年ぶりの奇跡的な再会を果たしました。

 電気も井戸もない、最大傾斜70度はあろうかというこのような土地での農業では、自給自足が精一杯、現金収入など微々たるものでしょうに、和気藹々、屈託なく生きるご家族を見るにつけても、暖衣飽食が当たり前でありながら、生きることの意味を見失っているかのような、この頃の日本人の不幸をつい思ってしまいます。

 私が非常用に持っていた、東芝TY-JR10という手巻き充電式ラジオです。
 AM.FMの受信と、ライトやサイレンその他もついていて、電池がなくてもハンドルを1分間に120回巻けば60分は使えるという優れ物。
 4,000円位で、少しお高いのが難点ですが、プレゼントして大変喜ばれました。「アジトゥは、ラジオが大好きなんです」とお父さんも喜んでくれました。スリランカでは、僻地でもFM放送局が多いようです。
 帰り道、学校帰りの一番下の妹プリヤンティさんに会いました。
 私個人の小さな奨学基金『あそか基金』を管理して下さっているアンギラサ師は、彼女を基金の対象にすることを約束してくれました。

 最近のスリランカの定期預金の利率は8.5%。
 僅かな元金ですが、その利息から毎月300ルピーを渡します。どの程度の足しになるのか、私にはよく分かりませんが、勉強の元気付けにはなるかなと思っています。 
これで奨学生は8人になります。
 

 急な山の傾斜を切り開いた、僅かの場所に家があります。10数年ほどの間に3回目の訪問ですが、草葺きから瓦屋根になり、人が通る幅の道は、傾斜が50度を超えるようなところは、コンクリートの階段になっていました。
 
フォスタープランのプロジェクトの成果です。
 アジトゥ家の畑です。傾斜をご覧ください。
 段々畑の一枚の幅は1メートルありません。点々と見えるのは多分芽生えたばかりのインゲン豆です。
 耕すことが出来ないような斜面には、カボチャやトウモロコシ。森には自家用の清涼飲料や調味料に欠かせないココナッツ、或いはコショウなど、正に適地適作を絵に描いたような農業といえましょう。
 でも、生産性をいい出したら、とても出来ることではないし、日本ならこのような村はとうの昔に廃村になっているでしょう。
 “一極集中”が起こらないことが不思議です。
 気息奄々の汗だくで、車のところまで帰り着いたら、何と路線バスが来ました。これだけの子どもたちが降りてもバスはまだ満員状態。
 ということは、この先の方にもまだ沢山人が住んでいるということです。

 教育に熱心なことは、この国の特色です。お隣のインドと較べると、そのことがハッキリ分かります。
 3歳からの幼稚園教育は国の義務ではないようで、地区のお寺や日本のお寺や学校法人などの援助で運営していますが、学齢期になった子どもは殆ど学校に行きます。
 国の政策だけでなく、親も我が子の教育に熱心なことは、服装を見れば良くわかります。(2005/12/01)
トップページへ